(2008.9.7に大幅に加筆しています)
凛野ミキ特集第二回目です。
今回取り上げるのは、現時点での彼女の唯一のシリアス長編作品(全4巻)である,
「光」です。
突然身体に星を司る痣ができたことで運命を狂わされる若者達の物語。
星の痣には「惑星」と「星座」の二種類があり、
「惑星」は「星座」を支配し(たとえば「土星」の支配下星座は「射手座」と「魚座」)、
「星座」は「惑星」を守護する(=他の惑星を倒す)ための特殊能力を持ち、
どんな理由であれ「星座」が死ぬとその能力はその「支配惑星」に受け継がれる。
36時間周期で訪れる「コンジャクション」と呼ばれる時間の停止。この止まった時間の中を動けるのは、星の痣を持つもののみで、再び時を動き出させるためには、誰かを一人倒すしかない。
そしてその闘いは、最後に一つの「惑星」が残るまで続く……
……というと何だかジャンプの超能力バトル漫画みたいですが、
ところがこれがちっともバトルらしいバトルにならないw
話の中心になるのは、「惑星」の宿命を持つ7人の若者達ですが、
この7人が予想に反して2巻の前半であっさりと集結します。
ですが、せっかく巡り会ったのに
この連中が全然お互い戦おうとしない(;´д`)
まぁそりゃそうで、彼らはみなふつーの高校生。
(というにはことごとく歪んでますが)。
いきなりお互い殺し合えと言われても、まったく事情もわからないわけで、そりゃあムリだよなぁ……むしろお互い助け合ってこのわけのわからない運命を乗り越えようとする有様です(>_<;)
それに対し、「星座」には能力が発現するときに同時に宿命の記憶が宿るため、基本好戦的です。
でも、
まともなキャラはごくごく一部で、ほとんどが自分の宿命に押しつぶされて頭おかしくなってますw
特に何気に主要キャラだった「射手座」とか、もう痛すぎて怖い|゜Д゜))ガクガク
というわけで、「星座」が登場すれば、少しバトルが動くのですが、
ところがそもそも話の前半にはほとんど出てこない(>_<;)
まぁ後半にはバンバン出てくるのですが、どっちかっていうと戦うためっていうより、
「惑星」に殺されるために
登場するような連中ばっかりなので、
「惑星」の連中の苦悩を深めたり、彼らの秘めた狂気を浮き彫りにするためのコマみたいな印象です(;´д`)
そうなのです。これは要するにバトル漫画ではなく、7人の「惑星」の若者たちを主人公にして、それぞれの歪みと狂気を描くことが目的の群像劇なのですね。
このSFバトル漫画チックな設定は、あくまで彼らを非日常的な極限状態に置くためのものなのですから、そりゃあジャンプ漫画とは似て非なるものになるのは当然だよな(´ω`)
でも残念ながら、この作品は
そのジャンプ漫画なみに壮絶な打ち切りをくらってしまいまして(>_<;)
(残虐描写や嫌悪描写があまりにハードすぎて、読者がドン引きしたのが原因らしいのですが……)
ストーリー的にはホント残念としかいいようのない中途半端さで終わってしまうのですが、
(途中まで張り巡らされた意味深な伏線はことどく意味不明で終わります
)
まぁそれもあんまし本題と関係ないからいいっちゃいいのかも。
だって最後の辺にはすでにいい感じに「惑星」達は頭おかしくなってますからw
そこから先のどう考えても救いようのない展開自体は、まぁうん、描かれなくても良かったのかも。
↓ネタバレなので伏せ字
話的には、このお話の唯一の良心であった「蟹座」がその力を奪いたい「月」に絞殺されたあたり(ここんとこのくだりはホント非道すぎるお話です(;´д`) それにしても「秋子祭り」ってタイトルセンスはすげぇよな)から歯車はおかしくなりはじめていましたし、そして「木星」によって「火星」の妹(「木星」が好きだった)が無惨にとどめをさされた段階で、避けようのない破局に向かって坂を転がりだしていますから……(・ω・`)
まぁしいて不満があるとすれば、おそらくこれから描かれる予定であったであろう、「太陽」と「土星」の抱えているものがそのせいでイマイチわからんかったことかなぁ。
「太陽」はいわゆるバトルものの主人公っぽい単純明快さを持ったキャラですが、この歪んでいるものばかりの世界の中で彼も歪んでないはずがなく(苦笑)、「自分の人生が他人事のように感じる」とか「友達がいなくて孤独」ぐらいの描写はあったけど、そんだけじゃあなぁ……(笑) ぜったいまだなんか隠してたはずだね。
そして「土星」の描かれてなさっぷりはヒドすぎるよ゜゜(´□`。)°゜
あれじゃあただの頭の弱い子だよ…… (O.O;) まぁ4巻で仲間の死体でごっこ遊びを始めるとことかは怖かったけど、なんかムリヤリやばい子にされたようで不自然だったなぁ。
しかしまぁそれ以外の惑星達がみんな濃すぎるというか
キチ○イ揃い
なので、充分ちゃ充分です。
「ボクはキミのことを想っていってるんだよ」が口癖で、人から優しいと言われることに歓びを覚えるくせに、自分の手を汚すことには極端に臆病な「水星」
(「蠍座」がこいつにむかつく気持ちもわかるわぁ(-.-) ちなみに主人公格)。
苦しい闘病生活を送ってきた過去から、命の危険に対し病的に臆病で、生き残るための努力と称して策をめぐらし、星座を殺しまくる「木星」。
(ベビーフェイスにごまかされそうですが、こいつが一番くせ者ですな)
理想的な兄弟愛の妄想にとらわれ、不治の病の妹の死を見たくないという裏返せばエゴゆえに「木星」と組んで凶行を重ねる「火星」。
(まぁ彼の行動原理は一番人間くさいっちゃ人間くさい(´ω`))
母親の歪んだ愛情のもと自我のない「人形」として育てられ反動から、自分の居場所をもとめてさまようハードボイルド美女の「金星」。
(ある意味闘うヒロインって感じなのですが、初めて愛した「天秤座」(「金星」の支配星座なので彼女に力を与えるべく自殺)の死を受け止めるために、その亡骸をズタズタにし、最後には首を切り落とすサロメさん☆でもあります)
そしてなんかもう説明する次元を超えた
本作最大の超S級ヤバイ人、
「月」こと本作のヒロイン秋子!!(゜ワ゜;)
いやもう彼女の怖さは読んでくれ!!としか言いようが……(;´д`)
自分に自信がなく、常に周囲に怯えて生きていた彼女、「水星」を愛し、その愛に依存することで自分の存在意義を確かめていた彼女が、力を得る中でどのように歪み、変貌していくか……
ああもうとにかく読んで!!(;´д`) もうホント怖いんだから!!
さすが「月」は狂気を司る星だよなぁと再認識させられますよ|゜Д゜))ガクガク
どちらにせよ彼らにほぼ共通しているのは、「自分という存在の不確かさ」への怯えと「現実世界や他者への恐怖」、「強すぎる自意識」と「自らの価値への不信」のギャップが産む苦悩です。
特に主人公・水星とヒロイン・月のあり方はその典型です。だから病的なまでに人に「優しい」と思われたかったり、誰かを盲目に愛することで自分の存在を確かめたりしているのです。でも、だからといってポジティブに何かをするということはできない。
そうして考えると、この作品は狂気の世界を描いているようで、やはり一つの普遍的な青春劇なんだなと思います(´ω`)
そしてそんな彼らが、存在をかけての殺し合いという極限状況におかれる中で、現実と向き合い成長していく……それは血塗られた道ではありますし、幸せなことだとも言えませんが、彼らは運命を受け入れて生きることを選択したわけですし、少なくともそこには現実と関わることにひたすらおびえていた姿は微塵もありません。
(その意味で、運命を受け入れきれずひたすら狂気に沈む「射手座」や、殺し合いの運命をひたすら拒否して死んでいった「蟹座」とは好対照)
だから本作のラストシーンでの主人公・水星とヒロイン・月の会話は、そんな彼らの成長を象徴するかのようで、印象的ですね。いかにもな打ち切られラストに見えますが、これはこれで目的を果たしたと言えるのでしょう(оωо)
最後に「光」というタイトルについてですが、「火星」妹が空の星を見上げてつぶやいた、
「あの光が欲しいって行ってみたらビルの窓よりも星のほうが辿り着くのはすっごく大変。ここからは同じ光に見えるのに、大きいものは遠くにあるの」
というセリフが一番それを象徴しているんだろうなぁと思いました。
病んだ作品ですし、正直救いようのない話だとも思うのですが、でも彼らは彼らなりに手に入らない遠くの光をつかみとろうと願って懸命に生きている、そんな若者達の苦悩が哀しくも愛おしいです。
高河ゆんをして、「気持ち悪い! 人間が。」と戦慄せしめた衝撃作。
グロ描写&病んでる系が苦手じゃなければ、是非ご一読を(´ω`)
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