『退魔光剣シェルザード!』第九章その6
『退魔光剣シェルザード!』
第九章もついに大詰め!(><)
ガロウ&ヴォルザードの猛攻の前に
絶体絶命のジーク&シェルザード!
同じく《智魔竜》ゴブもヒョウにとどめをさすべく迫る!
そしてついに悲劇が……!?
前回はこちらから!
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6
「さぁ、最期です。ご安心なさい。一瞬で心臓を凍らせて差し上げますよ」
ゴブの呪文の詠唱が始まった。
(こ……ここまでか……)
ヒョウが無念の思いで目をつむる。その脳裏を走馬燈のようにこれまで関係してきた女性たちの姿が浮かんでは消えていった。
(畜生……まだまだ色んな女の子を口説きたかったぜ……)
「とどめです!」
ゴブの手の平から、凍てつく銀色の光芒がほとばしろうとした--まさにその時!
ゴオオオン! 突如、凄まじい振動が、《竜王の間》全体を揺るがした!
「なんだっ!?」
バリバリバリーン! そしてその瞬間、天井をぶち破って一頭の赤竜が《竜王の間》に飛び込んでくる!
「え、《炎魔竜(フレイム・ドラゴン)》だと!? まさかフレイか……!?」
驚愕のあまり精神集中が乱れたゴブに、《炎魔竜》の放つ業火のブレスが直撃した!
「ぐぎゃぁぁぁぁ!?」
ゴブの全身が紅蓮の炎に包まれる。
「おのれぇぇ! しかしたかが『《炎魔竜》見習い』のブレス如きでこの《智魔竜(ワイズ・ドラゴン)》がやられるものか……!」
炎に焼かれながらも再び呪文の詠唱を再開しようとするゴブの目が、ハッと見開かれた。 その視線の先--ヒョウが唯一無事な右手を天にかざしている。
そしてその指先に、電光が集う!
「し、しまった!」
慌てて防御魔法に切り替えようとしたゴブより一瞬早く--ヒョウの指先から雷光がほとばしった!
「《雷弾(ライトニング・ボルトーーーォォ)》!」
カッ! 闇を引き裂くヒョウの最強呪文が、過たずゴブの心臓を刺し貫く!
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
そして断末魔の絶叫とともに、《智魔竜》ゴブの身体は、炎の中へと沈んでいった。
※ ※
「な……何だっ!?」
突然、壁をぶち破って現れた緑色の魔竜の姿に、ガロウの左手が一瞬止まる。
そんなガロウ目がけて、《風魔竜(ストーム・ドラゴン)》の口から竜巻のブレスが放たれるが、しかしそれはガロウのヴォルザードの一閃によって易々と振り払われてしまう。
「……クッ!」
続けて第二撃を放とうとする《風魔竜》に、ガロウが一喝した。
「この痴れ者めが! 魔竜の分際で《竜の支配者》たるこのオレに逆らうか!」
瞬間、ガロウの手にしたヴォルザードから、魔竜を服従させる強烈な音波が発せられ、《風魔竜》、そして加勢に来ようとしていた《炎魔竜》は、共に苦痛に顔を歪めて動きを止めてしまう。
(……緑の竜と赤い竜……? ま、まさか……!?)
かすむ視線で二頭の魔竜を見つめるジークの目が、思わずハッと見開かれる。
〈さぁガロウ、ぐずぐずせずに早くこいつを殺してしまえ!〉
思わぬ邪魔が入ったことに苛立ったヴォルザードが叫ぶ。その叫びに押されたようにして、ガロウはジークの心臓目がけ、飢えた魔剣を突き出した!
「死ねっ! ジーク・アルザード!」
だがその時、何者かがジークの前に立ち塞がった!
「だめぇぇっ!」
(……女!?)
その姿を見て、思わず剣を止めようとするガロウ。
だが、ヴォルザードはその意志に反して突き進み、そのままうなりをあげてクリスの胸に突き刺さった!
「ク、クリス!?」
目の前の光景が信じられず、ジークが呆然と叫ぶ。ヒョウも、フレイも、ウインも、ティアナも、そしてガロウでさえも、その場にいる全員が凍り付いたように動きを止める。
「ジ……イ……ク……」
クリスの身体からヴォルザードが抜けた。血が傷口からあふれ、クリスはそのままゆっくりとジークに倒れかかる。
「クリスッ!」
崩れるクリスの身体を抱きしめると、ジークは叫んだ。
「何でだよ、何でここにお前がいるんだよ! あれほど来るなって……!」
その瞬間、ジークは思わず絶句した。
クリスは笑っていた。激痛をこらえ、弱々しく微笑んでいた。
「……今まで……ずっと……お荷物だった……けど……」
クリスはジークを見つめたまま、嬉しそうにささやいた
「……でも……最後に……役に……立った……でしょ?」
「バ……バカ野郎!」
そんなクリスに向かって、ジークが怒鳴る。
そのとき、朦朧とする意識の中で、クリスは冷たいものが自分の顔に落ちてくるのを感じ、閉じかけていた目を開いた。
ジークが泣いていた。まるで途方に暮れた子どものように、目から大粒の涙をあふれさせて、その顔はぐしゃぐしゃに歪んでいた。
「死ぬな! クリスッ! 俺は……俺は……おまえを失いたくない!」
「ジィ……ク……」
そんなジークの悲痛な叫びに、クリスの目元がかすかに光る。
「ありがとう……ボク……嬉しい……よ☆」
クリスはもう一度だけ健気に微笑んで見せると、絞り出すような声でささやいた。
「さ……よ……な……ら……」
スッ……つぶらな瞳が閉じられ、そこから一筋の涙がこぼれ落ちると、クリスはそれっきり--動かなくなった。
「クリス……バカ野郎……」
ジークはうめくようにつぶやくと、震える手でクリスの小さな身体を抱き起こした。
「何で俺の言った事を聞いてくれなかったんだよ……邪魔だったからじゃない……好きだから……大切だったから残してきたんじゃねぇか……俺は……俺は……」
あふれる涙がクリスの頬に伝わり、少女の涙と一つになって、シェルザードの刀身へとこぼれ落ちる。
そしてジークは物言わぬクリスの身体を抱きしめて絶叫した!
「もうお前が傷付くのだけは、見たくなかったんだ-----っ!!」
ピカッ!! その瞬間、いきなりシェルザードがまばゆい光を放って輝いた!
凄まじいまでの緑光が、シェルザードの刃身からあふれ出し、辺りを包み込む!
「な、何だと!? シェルザードの刃がっ!?」
ガロウが我が目を疑って叫ぶ。
神秘的な緑光の輝きの中、もはやボロボロだったはずのシェルザードには刃こぼれ一つ無く、しかも以前より鋭さを増したかのように煌めいている!
「クリス……さみしいだろうけど、すぐに終わらせるから、少しの間ここで見ておいてくれよな」
ジークはクリスの亡きがらをそっとその場に横たえると、再びシェルザードを握りしめてすっくと立ち上がった。シェルザードの緑光の輝きに照らされるその身体には傷一つ無く、いつの間にか完全に回復をとげている。
「バカな……持ち主の傷まで癒やしたというのか!?」
愕然とするガロウに向かって、ジークがゆっくりとシェルザードを構えた。
「……行くぜガロウ、最後の勝負だ。クリスの仇……」
ジークの瞳に、激しい怒りの炎が燃え上がる!
「絶対に、討たせてもらう!」
〈僕もですよ、ヴォルザード……〉
意識を取り戻したシェルザードは、もう震えてはいなかった。恐怖を超えた正義の怒りが《神の右手》を包み込み、まばゆい緑光となって辺りを煌々と照らし出す。
〈僕が……僕がだらしなかったから……僕さえしっかりしていたら……こんな事にはならなかったんだ!〉
強烈な自責の念がシェルザードをさいなみ、そしてそれがヴォルザードへの怒りをかき立てていく。
〈だからもう僕は逃げない! ヴォルザード、必ずお前を倒す!〉
シェルザードの心の奥に残っていた、それはほんの一欠片の勇気だったかも知れない。だが、クリスの、そしてジークの想いは、確かにシェルザードに眠っていた真の力を呼び覚ましたのだ!
〈ほ、ほざけっ! 貴様ごとき出来損ないに何ができる!〉
ヴォルザードが吠える。そして黒き魔剣は、年端の行かぬ少女を刺し殺してしまった衝撃から未だ回復しきれぬガロウの心に、再び《闇》の波動を送り込んだ!
ドクン! ガロウの全身が激しく震え、その真紅の瞳が再び憎悪と殺意に燃え上がる。
〈殺れっ! ガロウ! あの娘の二の舞にしてやるのだ!〉
まるでヴォルザードに操られるかのごとく、ガロウはその声と同時にジーク目がけて襲いかかった!
ガキイィ! だがジークはヴォルザードの一撃をかわすことなく、逆にシェルザードを真っ向から叩き付けた!
「なっ!?」
凄まじい衝撃を受け、ガロウの身体が押し戻される。
「ウガァァァァァッ!」
瞬間、ジークは野獣のような雄叫びをあげると、続けてシェルザードを横殴りになぎ払った!
「がはっ!?」
受けたヴォルザードごとガロウは大きく吹き飛ばされ、そのまま地面に叩き付けられるられる!
「バ……バカな……何だこの凄まじい力は……!?」
信じられぬ……といった表情で立ち上がるガロウに、ジークが無言で歩み寄る。その全身からは《闘気(オーラ)》があふれ出し、まるで炎のように燃え上がっていた!
(次回、第九章完結! 掲載は7/15(金)予定です!)
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