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『退魔光剣シェルザード!』第二章(ぜんぶ)

 

ブログ内連載『退魔光剣シェルザード!』

一気に読むのがお好きな方向けの「ぜんぶ」Ver。

第二章「二枚目王子の挑戦!」デス〆(゜▽゜*)

(「続きを読む」で読めます)

 

なお、第一章「貧乏王子と盗賊少女」(ぜんぶ)はこちらから。

http://yuya2001.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-8c32.html

 

 第二章 二枚目王子の挑戦

     1

「あ~あ、た-いくつね-」」
 道無き荒野を馬に揺られながら、クリスはあくび混じりでつぶやいた。
「……」
 ジークは聞こえていないのか、単に無視しているのか、無言で少し前を進んでいる。
 ちなみにクリスがこのセリフをつぶやくのは、本日これで8回目である。
「ねぇ、聞いてるのー? ジークったらぁー」
「……」
 またもや返事はない。
「……もう!」
 クリスは軽くふくれたが、やがてあきらめたように肩をすくめると、ジークの背中から代わり映えのしないあたりの風景へと視線を移した。
 とにかく荒野! であった。やたらだだっ広いだけで、有るものといえばせいぜい雑草と岩ぐらいである。少なくとも鑑賞欲をそそる景色ではない。こんなもの、5秒も見れば十分だ。
 そしてこんな景色がここ3日ほどひたすら続いていた。そうでなくてもあまり気の長い方ではないクリスがイヤになるのも、いい加減ムリもない。
「ああ、やだやだ」
 もううんざり、とばかりにクリスはため息をついた。
「ねぇジーク、一体いつになったら《竜の台地》に着くのよぉ?」
「そんなに簡単に着くわけねぇだろ、大体ラコール出てまだ一週間もたってねぇじゃねぇか……」
 さすがに面倒くさくなって、ジークがたしなめる。でもクリスは相変わらずぼやき顔だ。
「それにしてもさー、いい加減怪物の一匹や二匹ぐらい出てくればいいのにね。だってこれじゃあ全然冒険らしくないじゃない」
「……おまえ滅茶苦茶言ってないか」
「だってせっかく冒険の旅に身を乗り出したっていうのに、やってる事っていったらただボーッと馬に乗ってるだけなんだもん。まだ初めはゴードンの奴が追ってくるくるかもしれないからハラハラしてたけどさー、でもそれも無いみたいだし。なんて言うかさーこう、スリルってのがないのよねー」
「……おまえねー」
 何か言ってやろうとしたジークだったが、不意にその黒い瞳がはるか前方に立つ砂塵をとらえた。
「おや?」
「どうしたの?」
「いや……よく見えないんだが……」
 じっ、と目をこらすジーク。
「どうやら何かが戦っているらしい」
「えっ? 何、敵なの!?」
 クリスは急に元気になると、背中のザックから遠眼鏡を取り出し、ジークに渡した。
「どんな奴なの? 何匹くらい? ねぇ、ねぇ」
「んー、あれは多分リザードマンだな。数はひの、ふの……結構いるぜ。八匹ほどだな」
「リザードマンが八匹ぃ~!?」
 思わずクリスの声が裏返った。
「ああ、それと騎馬の男が二人。どうやら派手にやり合ってるみたいだな。どちらもかなりの数がやられてるみたいだけど、騎士達の方が押されてる」
「なら早く逃げようよ!」
 キッパリとクリスは言い切った。
「その人達がやられちゃったら、次はボク達の番じゃない!」
「スリルって奴はどうしたんだ?」
 皮肉っぽくジークが突っ込む。
「リザードマンが八匹もなんて冗談じゃないよ! ジーク、キミはか弱い女の子を危険な目に遭わせる気?」
「……あんまりか弱い女の子とは思いたくないんだが」
 やれやれ、とばかりにジークは髪をかくと、遠眼鏡をクリスに投げ返して、スラリと剣を抜き放った。
「じゃあ、おまえはここで待ってな。すぐ戻ってくるからよ」
「えっ?」
 クリスはその大きな緑がかった瞳で、じっとジークを見つめた。
「まさか助けに行く気なの!?」
「決まってるだろ? 魔物にやられそうな奴を見捨てられるかよ」
「何考えてるのよ!? わざわざ危険に飛び込む必要なんてないじゃない!」
「いいから待ってろ!」
 ジークは耳もかさずに叫ぶと、馬の腹に蹴りを入れて、乱戦のただ中へと突進していった。
「もう……正義感だけはやたら強いんだから!」
 ボクは知らないよー、ため息をつくクリス。
 その頃、騎士達とリザードマンの戦いは佳境に入り、残っていた二人の騎士の内一人がとうとう魔物の刃の前に倒れた。
 残る騎士はただ一人。その白馬にまたがった騎士は、見たところかなりの使い手のようだったが、何と言っても多勢に無勢、一匹のリザードマンを打ち倒したものの、たちまち危機に陥ってしまう。
 そのとき、リザードマンの群れのただ中に、《闘気》を纏ったジークが猛然と突入してきた!
「うげぇっ!?」
 何が何だかわからない内に、一匹が青い体液をほとばらせて崩れ落ちる。
「義によって助太刀するぜっ!」
 ジークは叫ぶやいなや馬から飛び降り、突然の事態に混乱するリザードマン達を次々と蹴散らして行った。
「ひるむな! 新手と言ってもたかが一人! 我らガロウ辺境警備隊の敵ではない!」
 どうやらかなりの訓練を積んでいる一隊らしい。隊長格と思しきリザードマンが叫ぶとたちまちにして混乱は収まり、逆に組織的な反撃を開始してきた。
「おっ? 結構やるじゃねぇか、このトカゲ野郎!」
 前後左右からの攻撃をきわどくかいくぐりながらも、ジークのつぶやきは妙に楽しげだった。
「そうこなくっちゃなぁ!」
 ザン! 左からの攻撃を盾で受け流すと、振り向きざまにジークの刃がその敵を斬り捨てる。
「おら、次ぃ!」
 ジークが嬉々として叫ぶ。どうやら何だかんだと言っても、ジーク自身、クリスとの二人旅の緊張もあってか、だいぶストレスが溜まっていたようである。
 だが、あまりに浮かれていたためか、一瞬、ジークの背後に隙ができた。
 すかさず一匹のリザードマンが迫る。
 が、前の敵を相手にしていたジークは気付かない。
 リザードマンが剣を振り上げた! そして--
「うぎゃあっ!」
 背中を鋭い痛みが走り抜け、リザードマンは崩れ落ちた。その背中にはナイフが二本、深々と突き刺さっていた。
 いつの間に現れたのか、そこにはクリスが立っていた。
「あぶないなーもう、見てらんないよ、全く」
 世話が焼けるんだから、とクリスがちょっと得意げにため息をついてみせる。
 が、今度はそのクリスの後ろで、隊長と思しきリザードマンが剣を振りかざした。
「え”っ!?」
 凄まじい殺気を感じて、すかさずクリスが飛び退く。間一髪、軽く腕をかすめただけでかわしたものの、クリスはバランスを崩して転倒してしまった。
「キャアッ!?」
「くっくっくっ、よくぞかわした。だがそこまでだ小娘、我らが神、《闇》の魔神バドゥに捧げる生け贄になってもらおうか」
 リザードマンがゆっくりと歩み寄る。
「くっ!」
 シュバッ! クリスの手からナイフが飛ぶ。しかし敵は軽くそれをたたき落とした。
「無駄だ。この辺境警備隊長タース様にそんなものは通じん」
 チロチロと先の割れた不気味な舌を出して、タースがせせら笑う。
「クリス!」
 ジークが慌てて助けに行こうとしたものの、残り三匹のリザードマンがまとわりついて身動きがとれない。
「くそっ、邪魔だ! どきやがれ!!」
 苛立ちを込めたジークの剣がたちどころに二匹を仕留めるものの、その間にタースはクリスめがけて剣を振り上げた。
「死ね、小娘っ!」
(ジーク!!)
 クリスが目をつぶる。
 そのとき、少女の危機に気付いた白馬の騎士の身体から、青白い炎のようなものが立ち上るった。
 そして騎士は、今にも剣を振り下ろそうとするタースめがけて、叩き付けるような叫びとともに人差し指を突き出した!
「《呪縛(ホールド)》!」
 と同時に、タースの姿が、まさにその瞬間で静止した!
「が……!?」
 タースがうめくも、身動き一つできない。
「えっ?」
 何が起こったのかわからずに、キョトンとするクリス。
 しかし、
「う~、限界……」
 それもほんの一瞬で、ヘタ~と騎士は馬の背中に倒れ伏してしまった。
 それと同時に、もちろんタースは行動を再開した。
「今度こそ、死ねい!」
 タースの剣がクリスに迫る。
「キャアッ!!」
 再びクリスが悲鳴をあげた。
 が、その剣がクリスの身体をとらえる前に、ジークの投げた剣の一撃がタースの心臓を深々と刺し貫いていた。ほんの一瞬でも、ジークにとっては残りの一匹を倒すには充分な時間だったのである。
 血しぶきをあげてタースが倒れるのを見届けると、ジークはニヤリと笑っていった。
「あぶねぇなぁ。見てらんねぇぜ、全く」
 べーっとクリスは舌を出して見せたが、ジークの右肩から血が流れているのに気が付いて、ハッとなった。
「ねぇ、どうしたの!? その傷!」
「ん、これか、たいしたことねぇよ」
 クリスを助けるために少し強引な戦い方をした結果受けた傷だったが、ジークは涼しい顔をしてみせる。
「そんなことないよ! 血が出てるじゃない! 見せてみてよ!」
「うわ、よせ、やめろ、そんなに近づくんじゃない!!」
 ザックから傷薬を取り出して身体を近付けてくるクリスに、思わずおびえるジーク。
「そこのお二方」
 そのとき、不意にジークの後ろから、白馬の騎士が声をかけてきた。
「助太刀感謝する。是非、礼を言わせてもらいたい」
 騎士は白いマントをひるがえらせると、軽やかに馬から降りた。
 馬から降りてみると、意外と長身であることがわかる。スリムな身体に華麗な金色の装飾を施した純白の甲冑が、見事にフィットしていた。
(……? どっかで聞いたような声だな……)
 何か嫌ーな予感がしてジークが振り返った時、騎士はゆっくりと兜を外した。
 キラリ、見事な金髪が太陽の光を浴びて煌めく。
「我が名はヒョウ・アウグトース、魔道王国ライデルの……」
 だが、その視線がジークの顔に止まった時、騎士の名乗りが止まった。
 二人はしばらく無言で互いの顔を見つめ合っていたが、やがてほぼ同時に絶叫した!
「あ”~~~~~~っっ!!」

     2

「どうしたの? 知ってる人?」
 キョトンとするクリスの前で、ジークは続けて叫んだ。
「て……てめぇはライデルの軽薄王子っ!」
 負けじとヒョウも叫ぶ。
「お……おまえはトロキアの変態王子っ!」
「誰が変態だっ! この色情狂!!」
「なんだと、この貧乏人!!」」
 たちまちにして、二人の間に大ゲンカが始まった!
「やめなさ----いっっ!!」
 クリスの荒野に響き渡る大声に、さきほどの呪文ではないが、ピタッと二人の動きが止まる。
「もう、何だよキミ達は!? いきなりケンカなんかして。さっきまで一緒に戦ってたのに!」
「へっ、こんな奴助けに来るんじゃなかったぜ」
「フン、おまえの助けなんか無くても勝ってたね」
 一触即発。
「あ~~もうすぐケンカする!」
 頭を抱えるクリスを、ヒョウの目が鋭くとらえた。
「おい、ジーク、この子はどうしたんだ? 極度……というか異常な女嫌いのお前が、どういう風の吹き回しだ」
「いや……付いてきたいって言うんで……仕方なくというか……」
「何言ってんのよ、そもそもジークのせいだし、お金がないキミにボクが付いてきてあげてんでしょーが」
 ふんだ、とクリスは鼻を鳴らすと、そんなことよりさーとジークに尋ねた。
「ねぇジーク、結局この人は一体誰なの?」
「こいつか? こいつはヒョウ・アウグトース。ライデルの馬鹿王子だ」
 投げやりに答えるジーク。そのとき、ジークを押しのけるようにしてヒョウが前に出ると、透き通った空のような青い瞳でクリスをじっと見つめた。
(へぇーすっごい美形☆)
 クリスはちょっとドキドキしながらヒョウの視線を受け止めた。
「お嬢さん、お名前を聞かせていただいてよろしいですか?」
「え……ク、クリスです!」
 慌ててクリスは答えた。『お嬢さん』などと呼ばれたのは初めてである。
「クリスさんですか……可愛い名前だ。名は人の姿を表すと言いますから、ね」
 白い歯が煌めく。クリスはポッと頬を赤らめた。
「私の名はヒョウ・アウグトース。北方の誇り高き魔道王国ライデルの第四王子にして、《魔法戦士》の称号を与えられています」
 ヒョウはフッと笑うと、キザに髪をかきあげた。その仕草の一つ一つがことごとく決まっている。
「また、ライデルの民は私のことを《太陽の王子》と呼んでいるようですが、ね」
「《太陽の王子》ですか……とっても似合ってます☆」
 いつの間にか二人だけの世界を作り上げてしまったヒョウとクリスを、ジークは面白くなさそうに眺めていた。
(へん、なーにが《太陽の王子》だ。裏じゃあ《王家の種馬》って言われてやがるくせに。クリスもクリスだ。デレデレしやがって。火傷してもしらねーぞ!)
 大分ジークの個人的感情も含まれてはいたが、実はその通りなのであった。
 ヒョウはその端正な甘いマスクと、「王子」という地位を利用して、夜な夜な美女を漁り、ライデルの王都ヴァノーンにおいて、妙齢の美女ならば、婚約者がいようが人妻であろうが、はたまた未亡人であろうが、彼の手に落ちなかった者などいないと言われるぐらいであった。
 同じ「王子」でも誰かさんとはえらい違いである。
 ちなみにこの二人が初めて出会ったのも、ヒョウが女を口説いている時であった。
 グラード公国で建国百年を祝う式典が行われた時の事だった。来賓として招かれていたヒョウは、グラード一の美少女と呼ばれる姫君を見事口説き落とすことに成功し、人気の無い一室に連れ出して暗がりの中いざこれから! という時に、広い王宮内で道に迷い、偶然通りがかったのが同じく招かれていたジークだったのだ。
 裸の姫君を見たジークはもちろんバーサークし、そしてヒョウは瀕死の重傷を負った。
 それが二年前。二人の王子の因縁の始まりであった。
 それはさておき。
 ジークがふて腐れている中、ヒョウの鷹のように鋭いプレイ・ボーイの目が、クリスのスペックを的確にとらえていった。
(ふむふむ、年齢は十五歳。小柄ではあるがそれなりに発育はしている感じ。顔はオレの好みだ、文句無い。これから磨けば更に光るだろうな。それに何よりまだ処女だ)
 ヒョウの目がキラリと光る。
(ふふ……こんな辺境の地でこんな上玉に会えるなんてな。こいつは楽しませてもらえそうだ……!)
 内心ほくそ笑むヒョウの前で、クリスは何も知らずに無邪気に笑っていた。

     3

「おい、ヒョウ、ちょっとこっちに来い!」
 さすがにたまりかねて、ジークがヒョウをクリスから引き離した。
「何だよ」
 汚い手で人の腕をつかむんじゃない、とばかりに、ヒョウはジークの手を乱暴に振りほどいた。
 そんなヒョウに、ジークが噛みつくように叫ぶ。
「おまえ……さっきから黙って見てりゃあ、どういうつもりだ!?」
「どういうつもり……何のことだ?」
「とぼけんな! クリスのことだ!」
「ああ、クリスちゃんのことか。それが何か?」
「てめぇ、まさかクリスにちょっかい出すつもりじゃねぇだろうな!?」
 ギロッとにらみつけるジーク。だがヒョウは平然としたものである。
「何ムキになってるんだか。……はっはーん」
 なーるーほどー、ヒョウはジークとクリスを見比べてニヤリと笑った。
「な、何だよ」
 思わずたじろぐジーク。
「お前、さてはあの娘に気があるな? そーだろ?」
「バ……バカ言え!」
 思わぬ反撃を受け、ジークがうろたえる。
「フッ、どうやら図星みたいだな」
「ち、違う! そんなんじゃねぇ!!」
 ムキになって否定するジークを、ヒョウはニヤニヤしながら眺めていたが、不意に真顔に戻って言った。
「なーんだ、違うのかぁ」
「当たり前だっっっ!!」
 ジークは真っ赤になって力説しまくった。
「なら……」
 その瞬間、フッ、とヒョウの顔に妖しい薄笑いが浮かぶ。
「遠慮する必要は無いわけだな。安心してあの娘を口説かせてもらうとするか」
「……なっ!?」
 一瞬、唖然としたジークだったが、すぐに猛然と食ってかかった。
「じょ、冗談じゃねぇ! クリスに手を出しやがったら、俺が許さねぇぞ!!」
「別におまえには関係ないだろ? 人の自由恋愛に口を挟んでもらいたくないな」
 ヒョウは真っ向からジークと視線をぶつけ合うと、挑発するように顔を近付けて言い放った。
「悪いけど、あの娘はオレがいただくよ」
 それだけ告げると、ヒョウはまだ何か言おうとしているジークには目もくれず、スタスタとクリスの方へと歩いていってしまった。
 後にはただ、ジークが呆然としたまま一人取り残されていた。

     ※     ※

 いちゃいちゃいちゃいちゃ。
 いらいらいらいらいらいら。
(だ~~!! うっとうしい!!)
 楽しげに談笑するヒョウとクリスに対して、ジークの苛立ちは募るばかりであった。
(くっそ~! 何でこんなにイライラするんだっ!)
 それがわからないから、ますます健康に悪い。
 理由はある。いやあるつもりだった。
(俺はクリスの保護者だ。そのクリスが、あんな『けだもの』みたいな野郎の餌食になるのを黙って見ていられっか!)
 だが、いちゃつく二人を見ていると、そんな保護者としての気持ちだけでは説明できない何かが心の中で渦巻くのを感じて、ジークはやたらとイライラしてしまうのだった。
 そんなジークの前で、ヒョウのモーションはますますエスカレートしていった。
「おや、クリスさん。そのお怪我は?」
「えっ、ああ、これ? 何でも無いですよー、さっきちょっとかすっただけです」
 ドジ踏んじゃった、ペロリと舌を出すクリスの腕に、不意にヒョウがそっと手を触れた。(なっ!?)「えっ?」
 いきなりのボディタッチにジークの顔がひきつり、クリスがかすかに頬を赤らめる。
「ジッとしていてください」
 そんなクリスにヒョウが優しくささやきかける。
「安心して、力を抜いて」
 スッとヒョウの目が閉じられると同時に、口から静かに呪文の詠唱がもれる。
「最愛なる慈母神ラーシャの名において……」
 呪文の詠唱についれて、次第にヒョウの傷口に触れた手のひらが金色の霊光を放ち始め、やがてその光がクリスの傷全体を包み込んだ。
「光よ、傷を癒せ!」
 瞬間、金色の光が一瞬まばゆく煌めくと、傷はまるで光に飲み込まれるようにして消え去ってしまった。もちろん軽くうずいていた傷の痛みも同様である。
「えっ!?」
 驚きに目を丸くするクリスに向かって、ヒョウがフッと微笑んでみせる。
「《治癒(ヒーリング)》の呪文です。これぐらい大したことではありませんよ」
「すっごーい!!」
 そんけー☆ と歓声をあげるクリスの前で、ヒョウはキザに髪を払ってみせた。
(なーにカッコつけてやがる。《治癒(ヒーリング)》たって、ほんのかすり傷治しただけじゃねぇか! とんでもねぇ三流魔道士のくせしやがって!!)
 むっか~~っ! もはやジークは爆発寸前だった。
 そのジークの前で--
「あ、あの、ありがとうございます☆」
 クリスはジークには見せたこともないような可愛らしい笑顔を浮かべて、ヒョウを上目遣いで見つめた。
「いえ、それより礼を言わねばならないのはこちらの方です。あなたのような可憐な人に、私を助けるためにこんな怪我を負わせてしまうなんて……」
 そう言うと、ヒョウはクリスの前にひざまづき、ごく自然な動きでその小さな手のひらをとって軽く口づけをした。
(あっ、のっ、やっ、ろぉ~~!!)
 どっかーん!! 遂にジークは爆発した!!
「やい、ヒョウ! てめぇっ!!」
 剣の柄に手をかけたままずんずん歩み寄るジークに、突然クリスがあっ、と何か思い付いたように声をかけた。
「そうだ、ジークもヒョウさんに治してもらいなよ! さっき怪我してたでしょ?」
「いやだね」「いやですね」
 二人は同時に答えると、お互いににらみ合った。
「だーれがてめぇみたいな三流魔道士に癒してもらうかよ。命が惜しいぜ!」
「ふん、あいにくお前なんかの為に魔力を無駄にするほど、オレは酔狂じゃないんでね」
「へっ、てめぇの実力じゃあ、そもそももう魔力切れなんじゃねぇのか?」
「フッ、魔道の『ま』の字も知らない戦闘バカに大きな口を叩いて欲しくないね」
 バチッ、バチバチッ! 二人の視線が火花を散らす。
 にらみ合う二人をしばらく置いておいて、少し『魔道』について説明しよう。
 『魔道』とは、術者が呪文の詠唱と、「魔力」と呼ばれる精神の力によって世界そのものに満ちる大いなる力を引き出し、超自然的な行いを為すことである。その意味で、ジークの使う『闘気』が、戦士としてのとぎすまされた精神力により、己の内側にある力を引き出すものであるのとは、実に好対照な能力と言える。
 もちろん『闘気』と同じく『魔道』も誰にでも使えるものではない。それを使いこなすには、持って産まれた「魔道士」としての素質と、特別な学問・修行による鍛錬の二つが必要だった。だからクリスなどのように、『魔道』そのものを見たことがない人間も、世間一般には数多く存在している。
 ヒョウの場合は、「魔道王国」の名を冠するライデル王家の血筋もあり、素質は充分であったが、ただ何分本人が堅苦しい学問や修行を嫌い、女遊びにうつつを抜かしていたので、ろくに『魔道』を使えない。ジークが「三流」と揶揄するのも、単なる悪口だけではないのである。
 ……と説明している内に、見かねてクリスが二人の間に割って入った。
「ねぇ、お願い、ヒョウさん。そんなこと言わないでジークの怪我も治してあげてよ」
 クリスが頼み込むと、ヒョウはしぶしぶうなづいた。
「まぁ、クリスさんの頼みなら……」
「ね、ジークもつまんない意地張ってないで、治してもらいなよ」
「……分かったよ」
 ジークも仕方なく答えると、投げやりに傷口をヒョウにさし出した。
「ほらよ」
「……ならいくぜ」
 ヒョウは傷口に乱暴に手を重ねると、呪文の詠唱に入った。
 が、今度は呪文の詠唱と共に、金色の光ならぬ青白い火花のようなものが激しくヒョウの手の平に集いだして--
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 バーキバキバキバキバキバキッ!!
 ヒョウの手の平からほとばしり出た電撃が、ジークの全身を包み込む!
「きゃぁぁぁ!? ジ、ジーク!?」
 悲鳴をあげるクリスの前で、ジークは骨まで透けて踊るようにのたうっていたが、放電が止むと同時に勢いよくぶっ倒れた。
「あはは、悪い悪い。『ちょっと』呪文を間違えてしまったよ」
「て……てめぇはなぁ~~~!!」
 プスプスと噴煙を上げながら、ジークが殺気に満ちた目を向ける。
「ね、ねぇ、ヒョウさん」
 クリスは何とか場の気まずさを救おうと、努めて明るく話題を変えた。
「そう言えば、ヒョウさんはライデルみたいな大きな国の王子様なのに、こんな所で何をしていたんですか? 全滅しちゃったけどお供の人達まで連れて。何かの旅の途中?」
(そう言やぁ、こいつが何でこんな辺境にいやがるんだ? なーんかヤな予感だぜ……)
 いぶかしがるジークの前で、ヒョウは気取った口調でクリスに答えた。
「いえね、実は正義の名の下、《竜の台地》に捕らえられている不幸な姫君を助けに行く途中なのですよ」
 フッ、意味も無く前髪を払うヒョウに、クリスは驚きの声を上げた。
「えっ!? じゃあボク達と同じじゃないですか!」
「何、するとお前もか!?」
 今度はヒョウが驚く番だった。
「そーだよ、悪いかよ」
 ぶっきらぼうに答えるジーク。
「ははーん、わかったぞ。どうせ王国の半分が目当てだろ? 弱小国トロキアの『貧乏王子』が考えそうなことだな」
「うるせー、そういうてめえだって大国って言ったって四男坊じゃねぇか。どうせ分けてやる領地もねぇから厄介払いされたんだろ」
 図星。
「いや、それともそのまんまズバリ王女目当てだろ。アルカディアのティアナ姫は美人だもんなー」
「ひ、人聞きの悪いことを言うんじゃない! そんなくだらない理由でこの誇り高き『太陽の王子』ヒョウ・アウグトースが冒険の旅に出るものか!! もっと純粋な……」
「わかった。どうせてめぇのことだ。兄貴の許嫁にでも手を出して国にいられなくなったんだろ?」
「ぐっ……」
 さしものヒョウも言葉に詰まった。何せどれもこれも全部当たっていたりするのである。
「となるとこの騎士達も、『護衛』何かじゃなくて、てめぇが旅先で何かしでかさないための『見張り』だったんだろ? どーりであんまり悲しんでる風に見えないと思った。しかもやられてる人数がやけに少ないのを見ると、ほとんどは逃げちまったんだろ? さすがライデルの『軽薄王子』、身内からも全然信用されてねぇんだな」
「うっ……うるさい! 良く考えてみたら物目当てのお前に人の事が言えるかっ!」
 今度はジークが黙る番だった。
 そのまま無言で火花を散らす二人。
「……あのさー、にらめっこはどーでもいいからー」
 いささかげんなりしつつも、クリスが二人を分けた。
「ねぇ、ここはお互い手を組まない? だってヒョウさんのお供はみんなやられちゃったみたいだし、どうせ目的が一緒なら三人で協力した方が絶対にいいと思うよ!」
「俺やだね」
 間髪入れずにジークが答えた。
「何でこんな奴と一緒に行動しなきゃならないんだ。冗談じゃないぜ」
「オレだってお前を助けてやるなんて真っ平だね」
 二人はまたもやにらみ合いに入った。
「も~すぐケンカする~」
 呆れて果ててクリスは肩を落とした。
 だがその頃、そう言いつつもヒョウの頭の中では一つの考えがまとまりつつあった。
(……確かに気にはいらないが、ジークのバカのあのでたらめな強さは貴重な戦力だな。それにここでOKしないことには、あの娘をモノにするチャンスがなくなるか。ここのところ鬱陶しい見張りどものせいで随分禁欲生活を強いられてたことだし……ここで逃がすには惜しいってものだな……)
「わかりました。ここは我々の大義のために小さな私情は捨てましょう」
 そしてヒョウは、心の中の悪巧みなどはカケラも感じさせない爽やかな笑顔を浮かべると、スッと右手をジークに向かって差し出した。
「う……」
 こうなるとさすがのジークもちょっと断れる状況ではない。
(仕方ねぇな……)
 ジークは諦めると、ヒョウの手を握った。
「じゃあ、とりあえず『目的を達成するまでは』仲間だぜ。ヒョウ」
「ああ、『目的を達成するまでは』よろしくな、ジーク」
 ここにめでたくジークとヒョウの『王子コンビ』が結成された。
 仲良きことは美しきかな、であった。

     ※     ※

 五分後。
「俺だよ、俺! 俺が一番強いだろ!」
「いーや、どう考えてもオレの方が頭がいいし、『魔道』だって使えるぜ!」
「てめぇの『魔道』なんて子供だましレベルじゃねぇか!」
「なら公平にどっちがモテるかで決めようぜ!」
「そんなことが冒険に何の関係がある!?」
 二人はどちらが一行(パーティ)のリーダーになるかで、早くも大喧嘩を始めていた。
「あ……あの二人、ホントどーしようもないなぁ……先行き不安だよ、ボクは……」
 クリスは正直、頭が痛かった。
 

 カツーン、カツーン。鋭い靴音を響かせながら、一人の男がガロウ伯爵の待つ《竜王の間》へと歩を速めていた。
 中年ながらも少しの贅肉も無い鍛え抜かれた肉体に、オールバックの黒髪、そして額から右頬にかけて鋭い傷を持ったその男が通り過ぎると、ゴブリンの衛兵達が慌てて敬礼する。
 男はその後、角を二回曲がると、三首の竜の紋章の彫られた巨大な扉の前で立ち止まった。
「ガロウ伯爵様、四天王ダルシス参りました」
 男の野太い声に応え、扉の向こうから若い男の声が、入れ、と命じてきた。
 ぎ、ぎいいいっ--重い音を立てて扉がゆっくりと開き、男は《竜王の間》へと足を踏み入れた。
 見事な、しかし不気味な魔物たちの姿が彫られた大理石の柱が、血で染め上げたような真紅の絨毯を挟むようにして立ち並んでいる。
 そしてその奥、巨大な闇の魔神バドウの立像の下、翼を広げた竜をかたどった黄金の玉座に、腰に大剣を携えた一人の男が座っていた。
 まだ若い。おそらく二十を三つか四つ過ぎたくらいであろう。その掘りの深い顔立ちは端正ではあるが、まるで死人のように白く、また肩よりも長い銀色の髪が覆う瞳はルビーのように赤く輝いていて、その美貌の中ゾッとするような妖気を漂わせていた。
「よく来た。まぁ近くに来るがいい」
 若者--ガロウ伯爵の命に、ダルシスは玉座の前にまで歩み寄った。
 そこにはすでに三人の男が控えていた。一人はかつてアルカディア城を襲った竜騎将軍シグマ、そして後二人--一人はダークエルフ、そしてもう一人は漆黒のローブをまとった不気味な魔道士。その誰もが禍々しい邪悪な気を全身から放っていた。
「四天王が勢揃いとは穏やかではありませんな」
 ニヤリと口元を歪めるダルシスに、ガロウが眉一つ動かさずに言った。
「辺境警備隊の一隊が全滅した。隊長のタースも戦死だ」
「ほぅ、それはそれは」
 ダルシスの笑みがますます強まる。
「今度は少し歯ごたえがある奴らが来たようですなぁ」
「そこで卿に命じる。侵攻隊を率いてそ奴らを迎撃し……」
 ガロウはそこで一旦言葉を切ると、何の感情もこもらぬ声で続けた。
「一人残らず、抹殺せよ」
「わかりました。我がガロウ侵攻隊の勇猛さ、とくとご覧にお入れいたしましょう」
 ダルシスはその残忍な命に、むしろ嬉々として答えた。
「フッ、素手で竜をも倒す《竜殺し》たる卿の力……期待させてもらうぞ」
 ガロウは軽く笑って見せたが、しかしその目は乾いたままだった。
「おまかせ下され。我が必殺の『カイザン龍皇拳』に勝てるものなど……」
 刹那、ダルシスの右手が目にも止まらぬ速さで一閃した!
 ビシッ! 玉座の右後方に立っていたガーゴイルの像の右肩から左脇にかけて、糸のような亀裂が走り抜ける! そして像は鈍い音を立てて砕け散った。
「あなた様の他にこの世には存在いたしませぬ。では」
 ダルシスは不気味に微笑むと、一礼して退出していった。
「シグマ、ゴブ、ザイザロック、お前達も下がるがよい。余は少し一人になりたい」
 ガロウの命に従って残りの四天王達も退出し、《竜王の間》には、その若き所有者だけが残された。
 ガロウ伯爵--かつてはアルカディア王国の聖騎士であり、今では《闇》に魂を売り渡し、地上における魔族の司令官となったこの若者は、薄闇の中で視線を虚空にさまよわせたまま、一人黙然と玉座に腰掛けていた。
 だが不意に、他には誰もいないはずの《竜王の間》に、ガロウとは別の声が響き渡った。
〈ククク、ガロウよ。何を考えている?〉
 その声はガロウのすぐ側から聞こえてきた。しかしあたりには誰もいない。
「……お前には関係の無いことだ」
〈冷たい言われ様だな。オレとお前は一心同体のはずだろ?〉
 せせら笑う声が《竜王の間》にこだまする。
「……」
 ガロウは黙したまま答えなかったが、声はかまわずに続けた。
〈ククク、まあいい。しかしガロウよ、たかが侵入者の二人や三人如きに四天王の一人を出すとは、随分念の入ったことだな〉
「オレは油断して負けるのが最も嫌いだ」
 ボソッとガロウが答えた。
「後顧の憂いは早い内に断つべきだ。それにそ奴らに無惨な死に様を与えてやれば、これからの勇者気取りどもにも良い見せしめになる。違うか?」
〈クックックッ、それでいい。それでこそ《竜の支配者》の二つ名にふさわしい冷徹さよ……〉 
 声は邪悪の度合いを増してゆき、ついには押さえきれない哄笑となった!
〈そうだ、殺してやれ! 闇の魔神バドウ様への供物として、最も残酷な死を与えてやるのだ! 一人残らずな! アーッハッハッハッ!〉
「……」
 ガロウはその笑いには耳も貸さず、しばらく何事かに想いをはせていたようであったが、やがてその口からかすかなつぶやきが漏れた。
「ティアナ……」
 邪悪な高笑いの響く中で、ガロウは一人物思いに沈むかのように、再び視線を虚空に漂わせていった。
  
     5

「乾杯!」
 ヒョウが音頭をとり、三人はグラスを勢いよく合わせた。
 夜、一行は火を囲んで、ささやかな新パーティの結成式を開いていた。そうなるとやっぱお酒でしょう♪ということで、ヒョウがライデル王家秘蔵のとっておきのワインを、ジークとクリスに気前良く振る舞う。
 しかし、実はこれはヒョウの仕組んだ策略だったのである!
(ふっふっふ、ここで邪魔なジークさえじゃんじゃん飲ませて潰してしまえば、後はお酒の入った女の子一人……そうなればこっちのものさ)
 内心の笑いを隠すために、ヒョウはワインを一口飲んだ。ちなみにヒョウはプレイボーイの基本として酒の強さには自信がある。飲み比べに持ち込めば負ける気はしなかった。
 だが、そんなヒョウの思惑とは裏腹に、ジークはちびちびと口をつけるだけで、あまり飲もうとしない。
「どうした? 飲まないのか?」
「んー、こんないい酒、一気にやるにはどうももったいないくてなぁ……」
 ジークはしみじみとつぶやいた。
(……ど、どこまでもセコい奴……)
 このままではラチがあかない。焦れたヒョウは無理に笑って言った。
「いいから飲めよ、ここはオレのおごりだ」
「……そう言えば親父、酒好きだったよなー。なのにいつも貧乏でろくに飲むこともできないで……何か悪い気が……」
 酒が入ると妙に暗くなるジークだった。
 ぷっつん、ヒョウの堪忍袋の緒が切れる。
「ごちゃごちゃ言わずにさっさと飲まんかっ!」
 ヒョウは無理矢理ジークの口を開かせると、ワインをビンごと突っ込んだ!
 もが~~、ジークはしばらく目を白黒させていたが、ビンが空になると同時に真っ赤になってぶっ倒れた。
(さてと……)
 ヒョウは一息入れると、一人やけにおとなしく飲んでいるクリスに目をやった。
 クリスはすでに酔っているらしく、顔をほんのり赤く染めて、また一段と可愛らしさを増していた。
「静かな夜だね」
 ヒョウはキザにささやくと、クリスの横に腰を下ろした。
 ぐが-、ぐが-とジークの豪快ないびきが辺りに響く。
「やかましい!」
 ヒョウはジークにさるぐつわをかましてくると、気を取り直してクリスの横に座り、空を見上げてみせた。
「ごらんよ、星がきれいだ。まるで君の瞳みたいに、ね」
 こんなセリフを平気で吐いて、しかもきっちりキメる所がヒョウの恐ろしさである。
 しかし、クリスはピクリとも反応しない。--というか、まるで聞いていないようだった。
 ヒョウは右手を軽くクリスの前で振ってみせた。
 反応が無い。
 ヒョウは思わず地面に両手をついた。
(せ、せっかくキメたと思ったのに……)
 しばし落ち込むヒョウだったが、じきにあることを思い付いて顔を上げた。
(ものは試しだ)
 ヒョウの右手がそーっとクリスのミニスカートに伸びる。
 クリスはぼーっと虚ろな目をしたままである。
 ヒョウは慣れた手つきで、すっと優しくクリスの太股をなで上げた。
 ぴくん--一瞬クリスの表情が微妙に変化したが、相変わらずその目は宙を泳いでいる。
(よし、今なら何をしても気付かれん。なら遠慮せず……)
 ヒョウの目がキラリと光る。どうせなら口説き落とす方が面白いとは言え、基本落としさえできれば何でもアリというのがヒョウであった。
(フッ、どうせその後はオレの虜になるんだから、順番が少々逆になっただけのことさ。久々の上玉……楽しませてもらうぜ!)
 ヒョウはほくそ笑むと、まずはクリスの愛らしい唇を奪うべく、ゆっくりと顔を近付けていった。
 そして二人の唇がまさに触れ合おうとしたその寸前! 急にクリスが口を開いた。
「ねぇ……」
 ギクゥゥゥッ! ヒョウは一瞬心臓が止まるかと思った。
「あ、あの、これは、つまり、その……」
 わたわたとうろたえるヒョウ。だが次にクリスが言ったセリフはいささか予想外のものだった。
「……お酒ない?」
「は、はぁ?」
「お酒はもうないの? って聞いてるの……」
(やっぱ酔ってるのかな……?)
 と、クリスの様子をうかがおうとしたヒョウの鼻先に、いきなりナイフの刃が突き付けられた!
「どわぁぁっ!?」
 心底驚いて飛び退くヒョウに、クリスの罵声が飛んだ。
「耳ついてんだろ!? 酒持ってこいってんだよ! 酒!!」
「は、はい……ここに……」
 大慌てでヒョウは新しいワインのビンを差し出した。
「よーし」
 クリスはワイルドにナイフの柄でビンを砕き割ると、グラスになみなみと注いで一息に飲み干していく。
 ひっく、あっという間にクリスはビンを空けてしまうと、とろんとした目をヒョウに向けて尋ねた。
「もっと……ないの?」
「あの……クリスさん、もう止めた方が……」
 ひきつるヒョウの横をナイフがかすめて飛んでゆく。
「わ、わかった! わかりました!!」
 ヒョウが残っていた最後の二ビンを取り出すと、クリスは満足そうに微笑んでさっそく一本をぐびぐびやり始める。
(ま、まさかこんな可愛い顔して酒ぐせが悪かったとは……)
 頭を抱えるヒョウだったが、その肩がガッ!とつかまれたかと思うと、その口の中にいきなりワインのビンが突っ込まれた!!
「何辛気くさい顔してんだよ! ほら、お前も飲めよ!! オラオラッ!!」
「☆※★△£♂●▽!!」
「キャーハッハッハッ、おっかし~!」
 目を白黒させて手足をばたつかせるヒョウの様子を見て、クリスは無邪気に笑い転げる。
「し……死ぬかと思った……」
 やっとすべてを飲み干して、ゼーゼー荒い息をつくヒョウ。さすがに頭もガンガンする。だが、そんなヒョウに追い打ちをかけるべく、クリスが口を開いた。
「もう無くなっちゃった……新しいのちょーだーい」
「え、あ……あの、今のでその……」
 思わず口ごもるヒョウ。
「何、何? もっと大きな声じゃないと聞こえなーい」
「あの……もう……終わりなんです……け……ど……」
 冷や汗だらだらでヒョウは答えた。
「そっか……もうないのかぁ……」
「そ、そう、今ので終わりなんです……よ……」
 ははは……とヒョウが乾いた笑い声を立てる。
「ふーん、そうだったのかー☆」
 にっこりと、やけに明るくクリスが微笑んだ。まるで天使のような無邪気な笑顔に、ヒョウは内心ホッと胸をなで下ろす。
(良かった……これで一安心……)
 と思ったその瞬間!
 バキィィ! ヒョウの首にクリスのラリアットが炸裂し、「げふっ!」とたまらずヒョウは吹き飛んだ。 
「ゲホッ、ゴホッ……な、何を……!?」
 咳き込みながら転がり回るヒョウの背中に、クリスが勢い良く飛び乗った。
「ぐへっ!」
 カエルがつぶれたような悲鳴を上げるヒョウの背中に、クリスがピッタリとくっつくようにうつぶせになると、その耳元にささやきかける。
「……てことはキミ、ボクの分のお酒を飲んだんだね?」
(ボクの分って……無理矢理飲ませたんじゃないか!!)
 ひきつりまくるヒョウ。今のヒョウには押しつけられたクリスの身体の柔らかさ、暖かさを味わえる余裕はまるで無かった。
「吐き出せよ……」
 ボソリとクリスはつぶやくと、いきなり両手でヒョウのあごをつかみ、思いっきり引っ張り上げた!
「ギャァァァァ!!」
 メキメキと骨のきしむ音と共に、ヒョウが絶叫する。
「吐けよ! ボクのお酒だゾ!! 吐き出せよ!!」
 クリスは叫びながら、容赦なくヒョウの身体をエビぞりに締め上げる。
「た……たるけ……れ……」
 ヒョウは激痛と闘いながら、かすかな期待を込めてジークの方を見たが、ジークはさるぐつわをされたまま、酔いつぶれて完璧に熟睡していた。
 うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!! そこら中の闇を引き裂くかのように鳴り響くヒョウの絶叫と共に、荒野の夜は静かに(?)更けていった。
 
     ※     ※

 翌朝。
「何よキミ達ってば、たったあれだけのお酒でへばっちゃったの? だっらしないなぁ!」
 二日酔いで苦しむジークと全身の痛みに耐えるヒョウに対し、クリスはやたらと元気そうだった。どうやら昨晩の事はまったく覚えてないらしい。
(く……くそ……だがこれしきのことで諦めてたまるか! このヒョウ・アウグトースの名に賭けて、次こそは必ず落としてみせる……!!)
 襲いかかる激痛と闘いつつも、心の中で強く誓うヒョウ。だが、そんなヒョウをジークが真っ向からにらみつける。
(……ぜーったいにてめぇの思うようにはさせねぇからな……!!)
 バチバチと二人の視線が火花を散らす。
「ほら、ヒョウさんもジークも元気出しなよ! 冒険の旅がボク達を呼んでるんだから☆」
 そんな二人の想いも知らず、今日も明るく笑うクリスであった。
 
     ※     ※

 ヒョウを加えて三人になった一行が迎えた朝の一光景--
 だが彼らはその時まだ気付いていなかった。彼らを狙う闇の牙が、すでにすぐそこまで迫っていたことを!!

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